自虐の詩 3
あれは、確か26か27歳の頃で、バブルの真最中でした。
全く恩恵を受けていない僕にも、それは、強く伝わっていて、その落差を人ごとに感じていた。
僕は、渋谷の小さなプロダクションで働いていて、風呂なし4畳半に住んでいた。
会社には、お風呂があったので、いつもそこを借りていたので、不自由はなかった。
それに、風呂なんて、一日おきで十分だったし。
で、休みの日には、銭湯へ行っていた。
ある日、いつものように、簡単なコンビニ袋に洗面器に石けんと、タオルにシャンプーを持って、恵比寿3丁目の信号を、普通に汚いカッコで渡っていた。
そこへBMWが信号無視で曲がって来た。
良く聞く、あのスローモション。
ボンネットを転がりながら、洗面器と石けんが空を舞う。
シャンプーとタオルはコンビニ袋の中で遠く飛ばされた。
車の屋根を転がり、地面に落ちた。
すぐ、思った。
「恥ずかしい」「ちょっと、痛いふりをしよう(まぁ、実際居たかったし)」
「なんだか、人垣できちゃったから逃げられない(逃げるひつようなはいんだけど)」
気がつくと、石けんについた砂を手で落としていた。
なんだか、分からない行動!
で、そこへ現れたのが、うろたえたバブル女二人組。
すでに携帯をもっていて、僕を冷たい目で見た後、どこかに、電話。
言う事あるだろうにと思ったが、こっちが想像するような言葉が出てくる人種ではない事はすぐ分かった。
見物人だけが、僕を心配し、救急車を呼ぼうとしていたころ、彼女達の電話の相手が、速攻で到達。
心ある人さえも払いよけ、僕の足をさすりながら、(運動部で触れば分かるととわけのわからない事を言っていた)異常なしと、断定し、何かあったら、ここへ連絡するようにと、名刺と僕の連絡先を交換に、ドラマのように去っていった。
実際、僕は仕事が残っていたので、そっちの方へ気持ちが行っていたから、行かせてしまう事も間違っているし、どっちもどっちだ。
で、次の日、電話が鳴った。
昨日の男は、浮気相手だったらしく、(なんだか、そのもの!)で病院へ改めて行った。
何事もなかったが、細かい検査結果は何日か後に出るというので、また名刺だけおいて、風のように、去って行った。
その後何事もなく、相手は、慰謝料として、10万円置いて行った。
やったぁ!と、思ったが、よく考えると間違っているような。
でも、それは僕に取って過去の事で僕は、欲しかった椅子を買った。
ただ、冷ややかな目で見た、おんな達が象徴するなにかにいらつき、また、その目が象徴するのは、それまでの僕の人生の縮図でもあった。
絶対、見返そうと頑に思った。
(何故だか、相手には、通用しないのに、正面から、デザインを通して。)
それまでも、闇雲に仕事に熱中していたけれど、それよりもまして、僕が急展開するのは、それから、時間が掛からなかった。
なんだか、カッコイイ!(笑)